日本薬理学雑誌
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特集:薬理学研究に使う統計
酵素阻害様式の選択のための統計的アプローチ
赤澤 理緒中山 勝山崎 亜紀子橋本 敏夫浜田 知久馬
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2009 年 133 巻 6 号 p. 313-318

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抄録

酵素阻害反応の阻害様式の選択は,従来から,Lineweaver-Burkプロットなどを作成し,研究者の視覚的判断により行われている場合が多い.酵素阻害反応はMichaelis-Menten式に基づいて表すことができ,阻害様式の違いにより数学モデルが異なるので,阻害様式の選択を統計学的視点から考えると統計的モデル選択の問題に帰着する.本稿では,非線形最小二乗法を用いて阻害モデルを当てはめ,阻害様式の選択を行う方法(提案法)を評価し,従来型のLineweaver-Burkプロットに基づいた視覚的方法を客観化した方法(両逆数法)との比較を行った.モンテカルロシミュレーションによる定量的な検討により,提案法は,誤差が等分散の場合,および現実のデータをより反映した分布(CV一定)の場合のいずれにおいても,正しい阻害様式を選択できる割合(正選択率)が両逆数法に比較して高いことが示された.よって,提案法の有用性が定量的に示された.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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