日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規5-HT3受容体拮抗型制吐薬パロノセトロン塩酸塩(アロキシ®静注0.75 mg)の薬理学的および薬物動態学的特長,ならびに臨床試験成績
味岡 廣房森田 文雄秋澤 有四郎吉田 健一郎北村 龍一滝本 久美
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2010 年 136 巻 2 号 p. 113-120

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抄録

パロノセトロン塩酸塩(アロキシ®静注0.75 mg)は,「抗悪性腫瘍薬(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心,嘔吐)(遅発期を含む)」の治療薬として2010年1月に承認された,強力で選択的な新規の5-HT3受容体拮抗型制吐薬である.パロノセトロンは,ヒト5-HT3受容体を含む種々受容体に対する結合阻害試験で,他のセロトニン受容体サブタイプ をはじめ,その他種々の受容体に対してはほとんど親和性が認められず,5-HT3受容体に対する選択性が既存の5-HT3受容体拮抗薬に比べ極めて高いことが示された.また,イヌ,フェレットを用いた抗悪性腫瘍薬誘発嘔吐試験で,パロノセトロンは強い制吐作用を示し,その作用は持続的であった.一方,臨床試験では,日本人癌患者における薬物動態が検討され,パロノセトロンは既存の5-HT3受容体拮抗薬と比較し消失半減期が約40時間と非常に長いことが確認された.さらに,高度催吐性抗悪性腫瘍薬投与患者を対象にしたパロノセトロン0.75 mg単回静脈内投与比較試験において,グラニセトロンに対して,抗悪性腫瘍薬投与に起因する急性の悪心,嘔吐についてはパロノセトロンの非劣性,および遅発性の悪心,嘔吐についてはパロノセトロンの優越性が検証された.なお,パロノセトロン群の副作用発現率はグラニセトロン群と同様であった.以上の基礎および臨床試験成績より,パロノセトロンは5-HT3受容体への高い親和性と長い消失半減期から,癌化学療法時の悪心,嘔吐に対する抑制効果が優れており,癌化学療法時の支持療法の向上への貢献が期待される.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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