日本薬理学雑誌
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総説
脂質メディエーターとして機能するN -アシルエタノールアミンの分解酵素とその阻害薬
坪井 一人上田 夏生
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2011 年 138 巻 1 号 p. 8-12

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抄録

N -アシルエタノールアミンは長鎖脂肪酸のエタノールアミドであり,動物組織に存在して脂質メディエーターとして機能する一群の脂質分子である.そのうちN -アラキドノイルエタノールアミン(慣用名アナンダミド)はカンナビノイドレセプターのアゴニストとして働き,カンナビノイド様生物作用を発揮する.またN -パルミトイルエタノールアミンとN -オレオイルエタノールアミンは,それぞれ抗炎症・鎮痛作用,食欲抑制作用を持つ.これらの化合物はグリセロリン脂質を出発材料として生合成された後,脂肪酸とエタノールアミンに加水分解されることで生物活性を失う.分解酵素については膜に存在する脂肪酸アミド加水分解酵素(fatty acid amide hydrolase: FAAH)が古くから知られているが,著者らが見出したリソソーム酵素であるN -アシルエタノールアミン水解酸性アミダーゼ(N -acylethanolamine-hydrolyzing acid amidase: NAAA)も同じ反応を触媒する.本稿では,N -アシルエタノールアミンの生理機能を概説した後これら2つの加水分解酵素に焦点を当て,さらに新規医薬品への応用が期待されているこれらの阻害薬の開発についても紹介する.

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