日本薬理学雑誌
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特集 急性肺傷害治療戦略の現状と展望
敗血症性急性肺損傷におけるAlert細胞戦略
松田 直之都築 通孝市川 崇栃久保 順平田村 哲也足立 裕史
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2011 年 138 巻 4 号 p. 151-154

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抄録

敗血症(sepsis)は感染により導かれた全身性炎症反応症候群であり,サイトカインや炎症性分子の過剰産生により急性肺損傷や急性腎傷害などの多臓器不全を導く.主要臓器の一部の細胞は白血球系細胞と同様に,炎症性受容体を細胞膜上に発現し,まさに炎症を感知するAlert細胞(警笛細胞)として,ケモカイン,炎症性サイトカイン,一酸化窒素(NO),プロスタノイド,組織因子などの炎症性分子を産生する.このような警笛細胞は,全身性炎症の初期過程で増加する傾向があり,後にオートファジーやアポトーシスなどを介して死に至る.敗血症に合併する急性肺損傷の治療においても,II型肺胞上皮細胞,クララ細胞,血管内皮細胞におけるAlert細胞の機能を抑制し,Alert細胞を救命することが,初期の炎症相,回復期の繊維化相の軽減につながると考えている.

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© 2011 公益社団法人 日本薬理学会
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