本研究では、鉄マンガン団塊中へ選択的な濃集が示唆されているヒ素(As)とモリブデン(Mo)、及びヒ素と同族のアンチモン(Sb)の濃集機構に注目した。実験より、Asは鉄水酸化物に濃集している一方で、Moはマンガン酸化物(δ-MnO2)に選択的に濃集していることがわかった。このことは、構造的に未解明な点が多い海水起源鉄マンガン酸化物の主要鉱物であるFe-vernaditeにおいて、鉄水酸化物とδ-MnO2が微量元素の吸着サイトとして独立に機能することなどを示す。一方、Sbは、同族でpKaが類似するAsに比べて濃集度が大きかった。これは、アンチモン(Sb5+)が構造や中心イオンのサイズが類似しているFe3+やMn4+の構造に取り込まれ易いためと考えられる。