大崎国民健康保険加入者コホート研究(大崎国保コホート研究)は,生活習慣等の健康リスクが健康レベルと医療費に及ぼす影響を明らかにすることを課題としている.対象は宮城県大崎保健所管内の1市13町に居住し,平成6年8月31日時点で40∼79歳であった国民健康保険加入者全員約5万人である.1995年1月1日から2001年12月31日までの7年間の追跡により,運動不足,肥満,喫煙の有無別に8群に分けられた群間の1人当り1カ月当り医療費を算出した.運動不足(1日歩行時間1時間未満),肥満(BMI 25.0 kg/m2以上),喫煙(現在·過去喫煙)のいずれか1つのリスクを保有している群の1人当り1カ月当り医療費は,これらが1つもない群と比べ,それぞれ,7.5%,8.2%,9.0%上昇していた.これら健康リスクがすべて同時に存在する場合には43.1%上昇しており,こうした関係は解析を高齢者に限っても同様にみられ,高齢者においても生活習慣は医療費の大きな上昇と関連していることが示唆された.また,死亡者を対象に死亡年齢と終末期医療費を算出すると,死亡前1年間の医療費が最大となる年齢は男性で70∼74歳,女性で40∼64歳で,これより高齢になるほど,医療費は減少していることが明らかとなり,長寿と生涯医療費とは直接関係しない可能性が示唆された.