日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳梗塞及び脳出血における血小板凝集能の変動
奥田 文悟宇高 不可思岡田 方子岡江 俊二大槻 雄三塩 栄夫亀山 正邦
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1982 年 19 巻 6 号 p. 571-576

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抄録

ADPを用いた血小板凝集能を脳梗塞及び脳出血例について, 急性期より固定期にかけて測定し比較検討した. 対象として脳梗塞は急性期 (発症後1週間以内) 68例, 固定期 (4週間以上) 74例について, 脳出血は急性期46例, 固定期45例について測定したが, このうち脳梗塞39例と脳出血37例は急性期より固定期にかけて連続的に測定した. 凝集能は2次凝集を起こしうる最低APDにより3段階に分類した. 1, 2, 4μMADPにて2次凝集を起こしうるものをそれぞれ「亢進」「中等度」,「低下」とした. 急性期においては脳梗塞68例中49例 (72%), 脳出血46例中32例(70%) が低下していた. 固定期においては脳梗塞74例中33例 (45%) が亢進, 26例 (35%) が低下しており, 脳出血45例中14例 (31%)が亢進, 19例 (42%) が低下していた.
脳梗塞 (P<0.001), 脳出血 (P<0.02) ともに固定期は急性期より有意に亢進例が多かった. 脳梗塞, 脳出血, 対照群の順に急性期では凝集能は低下しており, 固定期ではその順に亢進していた. 脳梗塞固定期における凝集能は対照群より有意 (P<0.02) に亢進を示したが, その他の差は有意ではなかった. 急性期より固定期にかけて連続的に測定した例では, 内頚動脈系の脳梗塞例に亢進する傾向が強いのに対して, 椎骨脳底動脈系の脳梗塞例では亢進傾向を認めなかった.
脳梗塞, 脳出血の固定期の凝集能を65歳前後で比較すると, いずれも65歳以上で亢進例が多く, 凝集能は加齢とともに亢進する傾向を認めた.

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