本稿の目的は,首都圏近郊の東海道線沿線における大規模工場用地の利用変化と存続工場における研究開発機能の新展開を分析することである.首都圏に古くから立地してきた大規模工場は,特に都心に近接している場合,その多くがすでに閉鎖し,オフィスビルやマンション,商業施設に変化していた.しかしながら,マザー工場として生産機能を維持することで,あるいはまた研究開発機能を強化することで,存続している拠点も存在している.特に2000年代以降の研究開発機能の変化としては,1)製造機能と研究開発機能との近接性を重視した研究開発機能の強化,2)顧客志向の研究開発拠点の増設,3)シナジー効果の創出を目的とした集約型研究開発拠点の新設といった点があげられる.