目的.胸壁浸潤肺癌においてリンパ節転移以外の予後因子を検討するため,T3N0症例を対象として,予後因子との分析を行った.対象と方法.1977年1月から2001年12月までの期間に,当科にて切除術を施行した原発性肺癌のうち,組織学的に壁側胸膜·肋間筋·肋骨へ浸潤し,リンパ節および他臓器への転移を認めない,pT3N0M0非小細胞肺癌の完全切除79例を対象とした.これらについて,性別,組織型,腫瘍径,胸壁(肋骨)切除範囲,胸壁浸潤の程度,術後補助療法(放射線療法)の有無と予後との関連を分析した.結果.全体例の累積5年生存率は32.7%であった.予後因子として,浸潤の程度が壁側胸膜までの群では5年生存率は40.6%,肋間筋および肋骨に浸潤した群では15.0%と有意差を認めた(p=0.024).術後再発は79例中40例(51%)にみられた.初再発部位は,遠隔転移が35例,局所再発が5例であったが浸潤の程度とは相関しなかった.結論.pT3N0症例では胸壁浸潤肺癌切除例において,浸潤の深さが予後に影響するとの結果であった.術前および術後補助療法の適応を検討する際に,胸壁への浸潤度も考慮する必要があると考えられた.