肺癌
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総説
オステオポンチンは悪性胸膜中皮腫の細胞機能に影響を与える
大橋 里奈田島 健崔 日顧 涛樋野 興夫塩見 和宮元 秀昭西尾 和人高橋 和久
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2009 年 49 巻 4 号 p. 368-375

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抄録

目的.オステオポンチン(OPN)はインテグリンαvβ3を介して癌の進展や血管新生などに関与する接着分子であり,アスベストに曝露された悪性胸膜中皮腫患者の血清マーカーとして有用であることが報告された.本研究では悪性胸膜中皮腫細胞株におけるOPNの発現,接着,増殖,アポトーシスにおける役割について検討する.方法.各種の中皮腫細胞株を用いOPNの発現,細胞表面上の各種インテグリンの発現を評価した.固相化したOPNと細胞株との接着,増殖試験を抗αvβ3抗体もしくはArginine-Glycine-Aspartic acid(RGD)ペプチドの添加·非添加の条件下で行った.同様にOPN上でのアポトーシスと遊走能の評価と固相化OPN上におけるfocal adhesion kinase(FAK)のリン酸化を検討した.結果.Reverse transcriptase-polymerase chain reaction(RT-PCR)の結果,肉腫型胸膜中皮腫細胞株でOPNの発現を認めた.同様にFACScanTMではαvとβ3の発現とOPNに対しての接着,増殖の増強を認めたが,抗αvβ3抗体もしくはRGDペプチドの添加により阻害された.またOPN上で抗アポトーシス作用と,FAKのリン酸化の増強が認められた.結論.肉腫型中皮腫細胞株においてOPNに対する接着,増殖の増強,抗アポトーシス,FAKのリン酸化の増強が認められた.この機序にインテグリンαvβ3を介するシグナルが寄与している可能性が示唆された.

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© 2009 日本肺癌学会
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