肺癌
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総説
早期悪性胸膜中皮腫-病理診断の問題点と対策-
辻村 亨佐藤 鮎子鳥井 郁子玉置 知子吉川 良恵福岡 和也田中 文啓長谷川 誠紀中野 孝司
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2009 年 49 巻 4 号 p. 376-379

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抄録

目的.早期中皮腫病変(EM)と反応性中皮過形成(RM)との鑑別は治療方針を決定する上で極めて重要であるが,これらの病変を形態的に鑑別することは難しい.我々は悪性胸膜中皮腫(MPM)ではp16INK4A遺伝子やNF2遺伝子が高頻度に欠失することに着目し,これらの遺伝子異常がEMとRMの鑑別に有用であるのかどうかを検討した.方法.形態的特徴に免疫組織化学染色を加えて評価し,MPM(16例),RM(3例),EM(2例)を選別した.これらの症例についてp16INK4A遺伝子とNF2遺伝子の欠失領域のプライマーを作製し,ゲノムDNAを鋳型にしたリアルタイムPCRにより遺伝子欠失の有無を検討した.結果.全てのRM症例でp16INK4A遺伝子とNF2遺伝子はともに保存されていたのに対して,MPMの全ての症例でp16INK4A遺伝子が欠失するとともにNF2遺伝子も高頻度に欠失していた.また,EMの2症例でp16INK4A遺伝子の欠失がみられ,その内の1例はNF2遺伝子も欠失していた.結論.p16INK4AとNF2の遺伝子診断は,EMとRMの鑑別に極めて有用であると考えられる.

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© 2009 日本肺癌学会
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