2011 年 51 巻 7 号 p. 830-834
背景.肺類上皮血管内皮腫(pulmonary epithelioid hemangioendothelioma:PEH)は血管内皮細胞の増殖を特徴とし,緩徐に経過する低および中間悪性度の血管性腫瘍であり,悪性腫瘍の多発肺転移などとの鑑別を要する.画像所見や,気管支内視鏡検査などで術前診断に至る症例は少なく,多くは外科的肺生検にて確定診断を得ている.今回我々は胸腔鏡下肺生検で確定診断を得たPEHの1例を報告する.症例.症例は33歳女性.検診で胸部X線異常陰影を指摘された.胸部CTで両側肺野の多発粒状陰影を認め,転移性肺腫瘍が疑われたため当科紹介となった.全身検索で明らかな原発巣は認めず,肺生検での診断が必要と考えられたため胸腔鏡下肺生検術を施行し,PEHとの診断を得た.結論.PEHは気管支鏡やCTガイド下肺生検では確定診断を得ることは困難であり,外科的肺生検が診断に有用となることが多いと考える.また,予後不良因子がない場合でも予後予測は難しく,治療方法も確立されていないことより長期にわたる定期的な経過観察が必要と考える.