高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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短報
失語症状の回復経過
―2 年3 ヵ月の治療中断を含む6 年間の経過の検討―
近藤 郁江中川 良尚佐野 洋子船山 道隆加藤 正弘
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2016 年 35 巻 3 号 p. 332-337

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抄録

  失語症の長期経過については多数の報告があるが, 治療中断期間を含む長期経過の報告は見当たらない。
  今回我々は, 2 年 3 ヵ月の言語治療の後, 2 年 3 ヵ月にわたる治療中断期間を経て治療を再開した失語症例を経験した。その経過を, 標準失語症検査の総合評価法得点および下位項目成績の変化から検討した。
  その結果, 発症後 7~27 ヵ月時の間に言語理解能力, 発症後 28~55 ヵ月時の間に音読を中心とした表出能力, 発症後 56~70 ヵ月時の間に書字能力を中心に, 機能回復が生じていた。本症例の治療経過から, (1) 言語機能の回復には, 言語機能様式により順序性が存在する可能性があること, (2) 言語治療が中断されても, 外的言語刺激の受容によって言語機能が回復する可能性があること, (3) 書字能力の回復には, 日常生活を上回る外的な文字言語刺激が必要である可能性があることが示唆された。

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© 2015 一般社団法人 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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