2012 年 88 巻 2 号 p. 71-80
護衛艦「あたご」事件のように重大な船舶衝突事故が発生すると,両船の海上交通ルール履行の有無が注目される。海上交通ルールでは両船の位置関係が重要で,小さい船舶の方が衝突を回避しやすいものの,船舶の大きさ(船型)は関係がない。本研究では,1977年から2008年までの海難審判庁裁決録から,基本的な海上交通ルールが適用された衝突事件を抽出し,両船の船型を調査した。その結果,「横切り船の航法」が適用される状況において異船型間の衝突が多いことが示唆された。このことから衝突回避には,海上交通ルールの知識に加えて操船経験や判断時機等を考慮する必要があり,操船者のヒューマンファクター研究の必要性を指摘した。(表8,図2)