洪積層である上町台地と周辺の沖積低地に立地する大阪市内を中心として大阪平野の地下水の一般水質組成と水素・酸素同位体比、VOC類を分析した。その結果、上町台地の西側の沖積低地では、100mより浅い帯水層に分布する地下水に海水侵入による塩水化が見られた。塩水化の程度は50~100mの深度でそれより浅い地下水より大きい。上町台地とそのごく近傍の地下水は、希薄な炭酸水素カルシウム型の水質であるが、塩水化の見られない多くの沖積平野からの地下水は、炭酸水素ナトリウム型の水質を示す。水素・酸素同位体比から、100m以浅で存在する地下水は大阪市内の降水か淀川水系の河川に沿って遡上する海水を涵養源の一部としていると推定された。大阪湾沿岸に位置する100mより深い井戸から得られた地下水は、炭酸水素ナトリウム型で溶存ケイ酸が10mg/L以下の水質を持つ。これらの水素・酸素安定同位体比は前述のものより小さいことから、北摂山地での降水、あるいは、難透水層を通過した地下水を涵養源とすると推定される。1試料を除く全ての地下水はVOCを含まないことから、涵養された時期は1989年以降である。