日本看護科学会誌
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原著
母親の育児幸福感
──尺度の開発と妥当性の検討
清水 嘉子関水 しのぶ遠藤 俊子落合 富美江
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2007 年 27 巻 2 号 p. 2_15-2_24

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抄録

本研究では,Lazarusの理論による育児中の母親の肯定的な情動を「育児幸福感」とし,多面的な育児幸福感を捉える尺度を開発し妥当性の検討を行った.6歳以下の乳幼児期にある子どもをもつ母親を対象に,育児で感じる幸せな気持ちが生じるさまざまな場面を提示し,その度合を5段階評価で求めた.併せて妥当性の確認のため「主観的幸福感」や「育児ストレス」の尺度を実施した.有効回答872名であった.育児幸福感の項目を因子分析した結果,「子どもの成長」,「夫への感謝の念」,「子どもからの感謝や癒し」など8つの因子(41項目)が抽出された.信頼性の内的整合性を表すα係数は,第2因子の「希望と生きがい」が.867と最も高く,第6因子の「新たな人間関係」が.768と最も低かったが,すべての因子において十分な値が得られ,尺度の信頼性が認められた.育児幸福感と主観的幸福感との間には,総じて正の有意な相関があったが,「夫への感謝の念」を除き,低い相関がみられた.一方,育児ストレスとは,負の有意な相関がみられたが,「夫の育児サポート」を除き弱い相関だった.これらの主観的幸福感や育児ストレスの尺度との結果より,育児幸福感尺度の概念的妥当性について議論を行った.

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© 2007 公益社団法人 日本看護科学学会
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