日本看護科学会誌
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原著
糖尿病患者のHRQOLの評価に影響を与える要因の分析
足立 久子
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2008 年 28 巻 4 号 p. 4_8-4_16

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抄録

Time Trade-Off(TTO)法は,HRQOLを総体的に測定する方法のひとつである.
TTO法により,糖尿病患者を生存期間が短くなるが病気のない健康な状態で過ごしたい交換者,現在の糖尿病の状態のまま今後も過ごしたい非交換者に分けた時,前者にHRQOLの評価は低い.
目的:交換者になる確率を上昇させる要因を検討することである.
方法:112名の糖尿病患者から研究の同意を得た.TTO法と質問紙法を用いた.
結果:1)TTO法の結果,糖尿病患者で42名(37.5%)が交換者で,70名(62.5%)が非交換者であった.2)13項目からなる質問紙を用いて,糖尿病と治療法の患者の日常生活に与える否定的な影響を因子分析法を用いて検討した結果,「活動制限による孤独感」「病状悪化による精神的負担」「病気による可能性のない将来」「食事療法による精神的負担」の4因子が抽出された.3)ロジスティック回帰分析の結果,「病状悪化による精神的負担」「食事療法による精神的負担」の2因子,「身体的自覚症状がある」は交換者になる確率を上昇させる要因であった.
結論:交換者において,病状悪化や食事療法に対する精神的負担の軽減,身体的自覚症状の軽減などの援助の必要性が示された.今後は,これら3要因と非交換者との関係を検討したい.

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© 2008 公益社団法人 日本看護科学学会
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