日本気管食道科学会会報
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特集:高齢者の癌治療—気管食道科領域における—
高齢者の放射線・化学療法—頭頸部—
藤井 正人
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2012 年 63 巻 5 号 p. 367-373

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抄録

高齢者の頭頸部癌患者は特に喉頭癌や下咽頭癌で増加している。高齢者で進行癌の場合には根治的治療が困難な場合が多く,根治的手術に対してもさまざまな問題がある。多くの場合に放射線治療が選択され,全身状態が良好な場合には化学療法も併用する場合がある。しかし高齢者の場合の化学放射線療法は,Pignonらのメタアナリシスにおいても71歳以上になるとハザード比は約0.95となり5年生存率への上乗せは-0.7%と,高齢者になるほど化学療法併用効果は少なく,71歳以上では化学療法併用効果がないとの結果となっている。これまでの臨床試験においては高齢者での薬物療法効果は明らかではない。東京医療センターで2003年2月から2011年8月までに放射線療法を中心とした治療を行った75歳以上50例について検討した。50例中21例が死亡しているが,他癌死が4例,肺炎などによる他因死が5例を占めた。高齢者ではさまざまな合併症が存在することと重複癌も多く発生することが問題となる。高齢者に対する化学療法,放射線治療は高齢者の特殊性をふまえ治療効果と患者のQOLを十分考慮して治療計画を立て,治療後のケアも十分気をつけて行う必要がある。

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