日本作物学会紀事
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栽培
北陸地域における水稲鉄コーティング湛水直播栽培のコーティング量, 播種深および播種後の水管理が出芽・苗立ちに及ぼす影響
佐藤 徹東 聡志市川 岳史
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2011 年 80 巻 2 号 p. 157-164

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抄録

北陸地域における水稲鉄コーティング湛水直播栽培の出芽・苗立ちに及ぼす鉄コーティング量,播種深および播種後の水管理の影響を調べるため,現地試験,場内試験およびバット試験を実施した.現地試験および場内試験の結果,播種後の気温と水管理が出芽・苗立ちに影響することが示され,鉄コーティング量の影響は判然としなかった.また,場内試験において,鉄コーティング量を乾籾の0.25倍と0.5倍,播種後の水管理を落水,湿潤,湛水に変え,過酸化カルシウムコーティング種子を比較として専用条播機で播種したところ,苗立ち率は鉄0.5倍種子より鉄0.25倍種子および過酸化カルシウムコーティング種子が,また,水管理では湛水区より落水区および湿潤区が高かった.さらに,播種深を表面播種と土中播種に変えた場合には,鉄コーティング種子は過酸化カルシウムコーティング種子に比べ土中播種した場合の苗立ち率の低下が大きかった.バット試験の結果,土壌表面播種により落水区の出芽が遅れたが,種子の水分含量の増加とともに出芽率が高まり,土中播種の場合には湛水区の苗立ち率が低下した.以上のことから鉄コーティング直播栽培において苗立ち率を高めるためには,鉄0.25倍種子を土壌表面播種し,播種後の水管理は落水を基本とし,適宜,灌水して出芽に必要な水分を籾に供給することが重要と考えられた.

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