日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
イネ黄化萎縮病発生圃場に認められた水稲の奇形穂の形態と圃場内分布
白土 宏之大平 陽一
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2014 年 83 巻 2 号 p. 165-172

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抄録

秋田県横手市の水田において,2012年 7月6日(出穂28日前)の冠水によって奇形穂が発生し,奇形穂の形態によりイネ黄化萎縮病と診断された.イネ黄化萎縮病による奇形穂の発生実態を明らかにするために,奇形穂と奇形小穂の形態やその発生割合,圃場内分布を調査した.奇形穂は伸長型,短縮型,上伸下短型に分類できた.伸長型は,穂長が長く,小穂数が少なく,穎が長い小穂,有芒の小穂が多かった.短縮型は稈長と穂長が短く,小穂数は多く,穎が短い小穂が多かった.上伸下短型は上部が伸長型,下部が短縮型で小穂の貫生発生率が高かった.貫生発生率,有芒率,長穎率は1次小穂に次いで2次小穂が高く,短穎率は3次小穂で高かった.奇形穂の奇形小穂率は80%以上で,収量にはほとんど寄与しないと考えられた.奇形穂のある株の割合は66%,全穂に対する奇形穂率は7.8%であった.奇形穂率は水口周辺の排水不良箇所で高く,水尻で低かったが,田面の高さとは有意な相関が見られなかった.本事例におけるイネ黄化萎縮病による減収率は6%と推定された.

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