総合健診
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日本総合健診医学会 第40回大会
日本総合健診医学会 第40回大会・シンポジウム3 特定健診特定保健指導の今
一般定期健康診断と特定健康診査の調和
堀江 正知
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2012 年 39 巻 5 号 p. 613-619

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抄録

 わが国の医療保険制度は、労働者の医療保険から始まり1961年に国民皆保険制度が成立した。近年、医療費の公的負担額が経済成長を上回るようになり、2008年から老人保健制度を高齢者医療制度に改め、虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病の予防をめざす特定健康診査と特定保健指導を導入した。わが国の疾病予防対策は、結核予防のための健康診断を中心に発展し、成人病や生活習慣病の予防のための健康診査や人間ドックなどが発展してきた。また、1978年から国民健康づくり対策が始まり、2003年からは健康増進法に基づく「健康日本21」が推進された。
 一方、わが国の労働衛生対策は、職業性疾病の予防と労働者の適正配置を目的として、作業環境測定と健康診断を中心に発展してきた。1972年に労働安全衛生法が施行され、一般定期健康診断に血圧測定などが追加されてからは作業関連疾患の予防のための検査項目が増え、1996年からは事業者による就業上の措置と保健指導も規定された。また、1989年から健康増進活動(THP)が推進された。現在、特定健康診査と一般定期健康診断の検査項目は統一され、事業者には保険者に結果を提供する義務も規定されている。欧米では事業者が結果を把握して活用する健康診断の仕組みはなく、韓国では保険者が検査を実施して事業者に所見の有無を通知している。
 職場には雇用形態の多様化やメンタルヘルス対策の強化などの課題がある。事業者や自治体の協力を得て特定健康診査と特定保健指導を推進するには、国が小規模事業場における健康管理を経済的に支援する対策、保険者と市町村による資源や情報の一元化、特定健診などによる生活習慣病の予防と医療費の抑制に関する有効性の評価結果の公表、地域職域連携協議会の活用、職場における専門職の負担軽減などを推進する必要がある。特定健康診査などの推進が、産業保健専門職にとって職場や作業の改善といった本質的な労働衛生の活動に注力できる契機となることが期待される。

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© 2012 一般社団法人 日本総合健診医学会
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