日本耳鼻咽喉科学会会報
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下鼻甲介粘膜擦過細胞のNOS isoform発現に対するIFN-γ, TNF-αの影響
川本 浩子竹野 幸夫夜陣 紘治
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2002 年 105 巻 2 号 p. 158-165

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抄録

一酸化窒素 (NO) は, 気道において, 線毛機能亢進作用, 血管透過性亢進作用, 血管平滑筋トーヌスの調整などを介して, 各種病態に関与している. アレルギー性鼻炎においては, 健常者と比較して鼻腔中のNO濃度が高値であることが明らかになってきている. 過去に我々は, アレルギー性鼻炎患者における誘導型一酸化窒素合成酵素 (iNOS) の発現が健常者よりも増強していることを報告した. 気管上皮細胞のiNOS発現は, interferon-γ (IFN-γ), tumor necrosis factor-α (TNF-α) などの炎症性サイトカインの刺激により増強することが知られている. そこで, 鼻粘膜上皮細胞のiNOSおよび内皮型NOS (eNOS) 発現に対する炎症性サイトカインの影響について検討した. 通年性アレルギー性鼻炎患者11名, および健常者16名の下鼻甲介粘膜を擦過し細胞を採取した. 擦過細胞の約80%は上皮細胞であった. 採取した細胞に, 無刺激あるいはIFN-γ, TNF-αによる刺激を行った状態で, 抗iNOS抗体および抗eNOS抗体を用いて螢光免疫染色を行った. そして上皮細胞におけるNOSの発現を, 螢光強度を指標に測定した. 健常者においては, IFN-γ, TNF-αの刺激により, iNOS発現が有意に増強した. しかし, アレルギー性鼻炎患者においては, 無刺激の状態でのiNOS発現が強く, サイトカイン刺激によるiNOS発現の増強がみられなかった. また, eNOS発現については, 健常者およびアレルギー性鼻炎患者において, サイトカイン刺激による増強は認められなかった.
以上より, アレルギー性鼻炎においては, iNOSの発現が増強していると考えられた. また, 鼻粘膜上皮細胞において, IFN-γ, TNF-αなどのサイトカインは, iNOS発現を誘導し, NO産生亢進に関与すると考えられた.

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