腸内細菌学雑誌
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総説
腸内フローラと宿主粘膜免疫のクロストーク
後藤 義幸清野 宏
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2011 年 25 巻 4 号 p. 235-243

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抄録

近年,シークエンス技術や質量分析技術が発展するにつれて,腸内フローラのメタゲノム解析やメタボローム解析などの網羅的解析が可能となり,腸内フローラに関する研究が急速に拡大している.なかでも,腸内フローラと宿主粘膜免疫システムのクロストークについての研究の進展はめざましく,これまでに分泌型IgAに代表される免疫分子が腸内フローラならびに宿主腸管の恒常性維持に寄与していることが明らかとなってきた.一方,腸内フローラは「正」と「負」の免疫応答を主導するT細胞を誘導し,腸管において生理的炎症状態という生体にとって有用な環境を創出することで,宿主粘膜免疫の構築と維持に重要な役割を果たしている.この生理的炎症状態は,腸内フローラと粘膜免疫のクロストークによって巧妙に制御されているものの,この恒常性が崩れると炎症性腸疾患をはじめとする免疫疾患発症へと繋がる.腸内フローラ,および粘膜免疫の恒常性維持機構を明らかにすることは,これら疾患の新規治療法開発の基盤となる重要な情報を提供するのみならず,次世代型ワクチンとして期待されている経口ワクチンに代表される粘膜ワクチン開発に向けても貴重な開発戦略基盤を提供することができるであろう.

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© 2011 (公財)日本ビフィズス菌センター
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