日本助産学会誌
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原著
バングラデシュ農村部における女性の出産に対するケア・ニーズ
—SKILLED BIRTH ATTENDANTSへの示唆—
五味 麻美
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2013 年 27 巻 2 号 p. 226-236

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抄録

目 的
 バングラデシュ農村部における女性の出産に対するケア・ニーズを明らかにすることにより,Skilled Birth Attendants(SBA)のあり方について示唆を得ること。
対象と方法
 研究対象者はボグラ県農村部に居住し,過去1年以内に出産を経験した女性9名である。本研究の趣旨と倫理的配慮について説明し,自由意思に基づき研究協力の同意を得られた方を県内の3村から各3名ずつ選出した。研究デザインは質的・帰納的記述研究である。フィールドワークを通してフィールドノートと研究対象者への半構成的面接データ,キーインフォーマントへの非構成的面接データを収集し,半構成的面接データは質的・帰納的に分析を進めた。面接は通訳を介さず研究者が直接ベンガル語(公用語)で実施した。
結 果
 バングラデシュ農村部の女性の出産に対するケア・ニーズとして【家で産むための支援】,【親族の立会いで産むための支援】,【無事に丈夫な子を得るための支援】の3コアカテゴリーが抽出された。またケア・ニーズには宗教や慣習が大きく影響を与えていることが確認された。女性たちの語りからSBAは妊娠期の有益な情報提供者,異常時の援助者としては受け入れられつつあるものの出産時の精神的な支えとなる存在としては捉えられておらず,正常出産では親族を中心としたTBAが優位に選択されている現状が明らかになった。
結 論
 バングラデシュ農村部においてSBA が出産時の立会い者として選択されるためには,医療者として根拠に基づいたケアを実践するためのアセスメント力,判断力,実践力,特に基本的な産科緊急対応力を高め,専門性を適切に発揮しつつも宗教を含めた社会文化的背景を広く考慮し,女性と家族のニーズを尊重し意思決定を支える関わりを持つことが必要である。

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© 2013 日本助産学会
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