人間工学
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原著
携帯電話への文字入力が注意,歩行,メンタルワークロードに及ぼす影響-室内実験によるスマートフォンとフィーチャーフォンの比較-
増田 康祐芳賀 繁
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2015 年 51 巻 1 号 p. 52-61

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抄録

携帯電話への文字入力の影響を実験室実験によって検証した.実験参加者は,携帯電話を用いて文字入力課題を行うと同時に,視覚探索課題と聴覚探索課題を行う.この多重課題を椅子に座った状態と,床にテープで描かれた3 m四方の正方形の辺に沿って歩きながらの状態とで行った.使用した携帯電話は,フィーチャーフォン,スマートフォン,タッチパネルに触覚手がかり付きのシートを貼ったスマートフォンであった.実験の結果,携帯電話を使用する条件で視聴覚ターゲットに対する反応時間の増大と主観的メンタルワークロードの上昇が確認された.歩行に関しては,携帯電話使用時に歩行距離が短く,歩幅が小さくなった.また,フィーチャーフォンに比べて,スマートフォンで歩行ルートからの逸脱回数が有意に多かった.一方で,フィーチャーフォンと手がかり付きのスマートフォンの条件の間に逸脱回数の差はみられなかった.これらの結果は携帯電話,とりわけスマートフォンによる文字入力が歩行者の事故リスクを高めることを示唆している.最後に歩行中の携帯電話使用をより安全に行えるための人間工学的改善可能性について検討する.

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© 2015 一般社団法人 日本人間工学会
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