日本ではタケが人為の介在した土地へ侵入する現象がよく見られる。タケはケイ素集積植物である。ケイ素は土壌鉱物の風化過程や河川から海へのケイ素流入を通して大気中の炭素濃度の低下に影響を及ぼしている。陸上植生のケイ素循環は河川へのケイ素流入に影響を与えるため更なる測定が求められているが,温帯での竹林のケイ素循環の測定は行われていないようである。タケが優占する森林(竹林)とタケ以外が優占する森林(森林)のケイ素循環を比較することにより,竹林のケイ素循環の特徴を明らかにさせる可能性が考えられた。そこで本研究では温帯においてタケが侵入することにより成立した竹林と森林を含む調査地を2つ設定して調査地内の竹林と森林のケイ素循環を比較した。竹林のリターフォールによる土壌へのケイ素還元量は森林より高かった。両調査地とも竹林の植生による土壌からのケイ素吸収量は森林より高く,また1調査地において土壌の可給態ケイ素蓄積量は森林より竹林で高かった。これら竹林における森林と比較した吸収量と蓄積量の増分は,タケが竹林プロットへ侵入した後,土壌鉱物の風化によってもたらされた可能性が考えられた。タケは土壌鉱物の風化を促進して土壌へ溶存ケイ素を放出し,その結果,竹林では植生のケイ素吸収量やリターによる土壌へのケイ素還元量が高いという特徴がある可能性が考えられた。