2008年6月,日本医師会内に「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」が設置され,まず現在の勤務医のストレス状況や健康状態を把握するための調査を実施した。この結果を基にして,健康をサポートするためにE-メールによる相談,電話による相談を試行したので,その結果を示し,今後の課題を検討する。方法としては,日本医師会会員中,勤務医約8万人から1万人(男性8,000人,女性2,000人)を無作為に抽出し,質問票を郵送し,無記名での記入・返送をお願いした。質問票は(1)属性,(2)自分自身の健康管理と業務量,(3)うつ症状に関する質問票(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS-SR-16)の日本語版
6),(4)今後取り上げるべき勤務医の健康支援策,で構成されている。有効回答率は40.6%で,その回答を分析すると,2人に1 人が,休日が月に4日以下であった。2人に1人は半年以内に1回以上患者からの不当なクレームの経験があると答えた。6%が死や自殺について1週間に数回以上考えていた。QIDS の総得点によれば,男性では8.4%,女性では10.6%の回答者がメンタルヘルス面でのサポートが必要と考えられた。薬物療法や休職が必要なうつ病と思われるケースは1.9%にみられた。さらに,健康支援のための相談件数は,E-メールによるものは3 カ月間で10 件,電話による健康相談は1日であったが,件数は0件であった。「医師は自らは相談しない職種である」ことが再確認された。今後の対策として病院の産業医による早期介入など,新たな対策を考えていくつもりである。
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