日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
限局性主膵管狭細像を呈する自己免疫性膵炎に合併した膵体部癌の1例
西澤 弘泰藤本 康二山神 和彦小柴 孝友小泉 直樹山本 正之森 清近藤 武史伴 慎一清水 道生
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2009 年 42 巻 5 号 p. 516-521

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抄録

 症例は61歳の男性で,CT・超音波内視鏡検査で膵体部の腫大と,同部位に境界明瞭な直径約3 cmの腫瘤・複数の嚢胞形成を認めた.ERCP・MRCPでは膵体部主膵管の限局性狭細化を認めた.血液検査ではIgG4が206 mg/dl,Dupan-2が339 U/dlと高値を示した.膵腫大,限局性主膵管の狭細化,IgG4高値から自己免疫性膵炎と診断したが,膵体部癌の合併を否定できず,膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的に腫瘤部に高分化型浸潤性管状腺癌を,非癌部の小葉間および小葉内に線維化とリンパ球・形質細胞浸潤・リンパ濾胞形成を認め,形質細胞の多くがIgG4陽性であった.典型的な自己免疫性膵炎の主膵管狭細像はびまん性であるが,近年は限局性の症例も報告されている.しかし,自験例のように,限局性主膵管狭細像,特に腫瘤形成像を伴う自己免疫性膵炎の中には膵管癌の合併の可能性もあり,治療方針の決定に際し留意することが重要であると考えられた.

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