日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
術後に重篤なsyndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormoneを合併した膵頭部癌の1例
武内 有城福岡 伴樹高見 秀樹村上 弘城三輪 高也
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2009 年 42 巻 5 号 p. 522-527

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抄録

 膵頭部癌切除症例に合併した重症syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone(以下,SIADH)を経験したので報告する.症例は58歳の男性で,膵胆管合流異常(Type IIa)に合併した2.2 cmの膵頭部癌として,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(D2,II型再建)を施行した(t3n2M0 Stage IVa).術後順調に回復していたが,胃排出遅延の合併から食事開始は遅れていた.術後17日目に細菌性腸炎を合併し,胃液喪失の予防目的にてproton pump inhibitor(以下,PPI)を使用した.術後29日目に発熱と意識障害から半昏睡を来し,採血にて血清Na 104 mEq/Lと著明に低下し,精査にてSIADHと診断した.同時に,敗血症も来しており,水制限は困難なため,積極的なNaの補給とフロセミド,塩酸デメチルクロルテトラサイクリンを使用し,治療開始後15日目(術後44日目)に改善した.SIADHは腫瘍や薬剤などの原因にて発症するが,大手術後に合併したものは極めて重篤になることがあり,PPI投与も原因となる可能性もあり,注意を要する.

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