2009 年 35 巻 4 号 p. 356-359
ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)は子宮頸癌の発生に関与することが知られているが,近年の分子疫学的検索から頭頸部扁平上皮癌,とくに扁桃原発中咽頭癌へのHPVの関与が明らかになりつつある。HPV感染の有無は扁桃原発の中咽頭癌においては診断としても有用であるばかりでなく,ワクチンの開発,普及が進めば予防,さらには発症数の減少につながる可能性があり,今後の発展が望まれる分野である。本稿ではこれまでに報告されているHPVによる頭頸部癌の発癌メカニズムおよびHPV検出法について概説するとともに当科における中,下咽頭癌症例でのHPV検出についても述べる。