頭頸部扁平上皮癌71症例を対象に,HPVの検出,タイピング,p53遺伝子変異の解析を行った。71例中,8例(11%)にHPVの感染を認め,いずれも中咽頭癌であった。タイピングの結果はタイプ16が7例,タイプ33が1例であった。HPV感染の有無と臨床的な背景との関連を検討すると,HPV陽性腫瘍の大部分が口蓋扁桃および舌根から生じていた。また喫煙状態との関連を見ると,HPV陽性症例は有意に非喫煙者が多い傾向が認められた。またHPV感染の有無とT分類,N分類,病期分類との関連は認められなかった。p53遺伝子の変異については,中咽頭癌14例中,8例(57%)に変異を認めたが,HPV陽性症例では有意にp53の遺伝子変異の頻度が少なかった。以上の結果から,HPV陽性の頭頸部癌は従来から提唱されてきた発癌メカニズムとは異なる機序で発生したと考えられ,これらのHPV陽性症例に対しては新たな治療戦略が必要であると考えられた。