日本舌側矯正歯科学会会誌
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当院におけるフルカスタムリンガルブラケット装置装着患者のブラケット脱落率の評価
林 亜弥伊藤 剛志中野 裕子居波 徹
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2015 年 2015 巻 25 号 p. 4-12

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抄録

目的
リンガルブラケット矯正治療において,脱落したブラケットを正しい位置に装着することは高度な技術を要する.このため,ブラケットの脱落を可及的に防ぐことが求められる.そこで本研究では,フルカスタムリンガルブラケット装置であるIncognito™(Top-service für Lingualtechnik GmbH, 3M Unitek, Bad essen, Germany)を用いて治療を行った患者におけるブラケット脱落率について調査し,その結果について検討した.
資料および方法
Incognito™を用いて治療を行った患者42名(男性7名,女性35名,平均年齢28歳3か月)を対象とした.調査項目は治療期間中の脱落回数,脱落部位,歯種別の脱落率,さらに高い脱落率を有する患者(脱落回数4回以上の患者11名)においては,脱落歯面における補綴処置の有無,ブラケットベース面の形態,使用した接着材料の種類を調べた.
結果
全患者における平均脱落回数は2.3回であった.一度もブラケットが脱落しなかった患者の比率は,全体の43%であった.また,上下顎とも大臼歯部が高い脱落率を示した.脱落歯面の性状は,天然歯と比較して,レジン修復,金属修復,ポーセレン修復された歯面が高い脱落率を示した.さらに,ブラケットベース面の形態を比較した場合,広く歯面を覆うよう設計されたバンド型やパッド型ブラケットは低い脱落率を示した.
考察および結論
本研究結果より,大臼歯部や補綴処置された歯ではブラケットが脱落しやすいことが分かった.このためブラケットの脱落を防ぐためには,症例に応じて接着面積を広く設計し,補綴処置された歯面に対して接着する場合にはアンダーカットを付与するなど付加的前処置をする必要があると示唆された.

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© 2015 日本舌側矯正歯科学会
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