日本舌側矯正歯科学会会誌
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上顎前突治療のための基礎的背景
葛西 一貴
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2016 年 2016 巻 26 号 p. 5-15

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抄録

今回の講演では,3つの話題をお話ししたい。最初の話題は,現代の上顎前突の特徴である。咀嚼筋が付着する下顎枝が発達し,歯列幅が広く,切端咬合を特徴とする縄文時代人と比較すると,現代人は下顎枝が華奢で,歯列は狭窄し,屋根状咬合を示し,長顔型で下顎が後退している。小学生を対象とした疫学調査から,口呼吸あるいは安静時に口を開いている子供の比率が高く,アデノイド等の鼻疾患も相まって長顔型の顔貌を呈している子供が多くみられる。つまり現代人にみられる問題点は,下顎枝の短縮,下顎の後退,顔の幅の減少,歯列幅の減少によりハイアングルの上顎前突が増加していると言える。このため,矯正歯科治療においては,大臼歯の挺出ならびに近心移動に配慮が必要な症例となっている。 このような大臼歯の固定に配慮した治療法としてTweed法がある。そこで話題の2つ目はTweed法の基本理念について,診断基準である下顎中切歯の位置をどうコントロールするか,Ⅱ級およびⅢ級顎間ゴムの弊害,さらにはTweed - Merrifield法(J-hook H/G)についてその理論を症例から考察してみたい。 最後に3つ目の話題として,治療後の安定性についてTweed法ではどうフィニッシュするかの観点からTweed occlusionを紹介し,さらに現在よく話題になる歯列拡大の是非について述べる。

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© 2016 日本舌側矯正歯科学会
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