本研究では, 全般的な知能が正常である韓国語話者小学校3年生103名を対象とした. 標準化された読み検査での平均得点の-1.5SDを基準にし, 読み成績下位群と上位群に分けハングル音読にかかわる認知機能の検討を目的とした. 児童全例を対象とした分析の結果, ハングル音読力を予測する因子として語彙力と命名速度, そして音素認識が抽出された語彙力が音読力を予測する第1因子であることは, 日本語の漢字に関する報告と共通であり, 音素認識が音読力の有意な予測因子であったという結果は日本語の仮名文字に関する報告とは異なり, 音節認識力ではなく音素認識力が重要であると考えられた. 読み成績下位群では上位群に比べて音韻情報処理課題と自動化課題で有意な得点の低下を認めたことから, ハングルの音読力低下に影響を及ぼす要素的認知機能としての音韻処理能力と自動化能力の関与が示唆された.