2011 年 52 巻 4 号 p. 336-347
本研究は,学童期に良耳の聴力レベルが90 db以下であった聴覚障害者(111人)を対象として,彼らの後期中等教育以降のコミュニケーションの実態を明らかにすることを目的とした.方法には,質問紙法を用い,発信時に使用するコミュニケーション手段,静寂環境下や反響騒音下,あるいはコミュニケーションの相手が複数である場面における音声の理解度,講義や会議の場面で利用する情報保障手段,コミュニケーション場面で利用する方略,遠隔地コミュニケーション場面で利用する方法について回答を求めた.
その結果,対象者は,音声を主たるコミュニケーション手段とし,特に発信者となる場合は,その傾向が顕著であった.一方,受信者となる場合は,良耳の聴力が80 dB以上の者は,音声聴取に関する環境やコミュニケーションの相手の変化によって音声によるコミュニケーションに困難が生じる場合もあり,それを複数の方略の活用により対処していることが明らかとなった.