声門閉鎖不全に対する代表的な外科的治療法の一つに声帯内注入術がある.わが国では注入物質としてシリコンが頻用された後,今日までアテロコラーゲン,自家脂肪,リン酸カルシウム骨ペースト等が用いられてきた.さらには分子生物学的アプローチとして増殖因子の注入も試みられている.どの注入物質にも長所と短所があり,理想的なものはいまだ存在しない.
われわれは,注入材料の新たな可能性としてヒアルロン酸に注目し治療に用いてきた.今回,13例の声門閉鎖不全に対し声帯内ヒアルロン酸注入術を施行し,その適応と限界について検討し,以下の結論を得た.
1.特に振動部声帯の質量補正を目的とした注入材料としての有効性を示唆した.
2.他の注入材無効例にも有効性を示した.
3.声帯の内方移動を目的とする場合はhard typeまたは他の術式が望ましい.