音声言語医学
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総説
吃音症を聴覚で科学する
菊池 良和梅崎 俊郎小宗 静男
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2013 年 54 巻 2 号 p. 117-121

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抄録

吃音症は,原因・自然回復に誤解の多い疾患である.その誤解を解くには,吃音を科学する,ことが必要である.吃音症の興味深い特徴の一つとして,マスキングノイズや,遅延・周波数変換聴覚フィードバックを聴かせながら話すと,吃音が軽減する.その不思議な吃音症の病態は解明されていないが,聴覚入力異常が吃音症の発症に関与していることが推察できる.そこで聴覚入力機構を調べるために,時間分解能と空間分解能の高い脳磁図を用いて,聴覚ゲーティング機能,聴覚皮質の周波数配列,そしてMRIで灰白質量を比較するボクセル形態解析法を行った.その結果,吃音群において,左聴覚野での聴覚ゲーティングの異常と,右聴覚野での周波数配列の広がりと,それに相応する灰白質量の増加が示された.この結果から吃音者では基本的な聴覚入力において,異常があることが示唆され,吃音の発症の原因の一因と考えることができる.

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© 2013 日本音声言語医学会
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