年長児145名に対し,ひらがな1から3文字の音読と書取,複数の認知課題を実施し,幼児のひらがなの読み書きに影響する認知要因を検討した.音読や書字成績を従属変数,認知課題成績を独立変数とした重回帰分析の結果,音読ではRAN,単語逆唱,非語復唱の成績が有意な予測変数として抽出された.書取では,図形の模写,単語逆唱,非語復唱の成績が有意な予測変数として抽出され,図形の模写の貢献度が最も高かった.また,音読と書取課題それぞれについて成績上位群と下位群間の認知課題の成績を比較した結果,いずれも下位群が上位群に比べて有意に,RAN,音韻情報処理課題,図形の模写と直後再生課題の成績が低かった.年長児におけるひらがなの音読と書取には,自動化能力,音韻情報処理能力,視覚認知能力が必要であり,特に書取において視覚認知能力がより重要であることが示唆された.