音声言語医学
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総説
先天性難聴児の遺伝子変異の研究と診療における新しい動向
松永 達雄
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2015 年 56 巻 3 号 p. 219-225

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抄録

本稿では先天性難聴の遺伝子変異の研究と診療の最新の動向を概説しつつ,私たちの取り組みについて紹介する.先天性難聴児の約70%は遺伝子変異が原因であり,各難聴児で原因遺伝子を確定して臨床的特徴を予測できると診断や治療に役立つ.聴力検査で正確な聴覚情報を得ることが容易でない乳幼児では特に意義が高く,国内では先天性難聴の遺伝子検査が保険適応である.遺伝子情報は重要な個人情報であるため慎重な取り扱いが必要であり,遺伝子診療は難聴診療のなかに適正に位置づけられて実施する必要がある.難聴の遺伝的原因はきわめて多様なため,適正な検査が必要である.新たな検査技術として次世代シークエンサーが開発されて高い効果が報告されている.遺伝子診療にはまだ多くの解決すべき課題があり,これに対する取り組みが進んでいる.遺伝性難聴の根本治療に向けての新たな研究としてPendred症候群による難聴者からのiPS細胞を用いた創薬研究なども進んでいる.

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© 2015 日本音声言語医学会
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