音声言語医学
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症例
難治性の変声障害に対する音声治療
石毛 美代子大森 蕗恵二藤 隆春小林 武夫鈴木 雅明
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2015 年 56 巻 3 号 p. 244-249

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抄録

発声発語器官に高度の過緊張を呈した難治性の変声障害の1症例(14歳男性)を報告した.咳払い,ハミング,声門破裂音といった音声治療手技のいずれによっても低い声が誘導できず,正常な地声を得るまでにKayser-Gutzmann法と舌の脱力を用いた5回の音声治療を要した.全12回,約4ヵ月間の音声治療により正常な低い声が安定し,声の基本周波数は治療前のF4(約350 Hz)から治療後はB2(約120 Hz)に低下した.音声治療後2年の経過観察時,正常音声は保たれていたが家庭で裏声を使う習慣が残存していた.
一般に変声障害では数回の音声治療のみで容易に適正な声の低音化が得られ,その効果は永続的に保たれる.しかし少数ではあるが難治性の変声障害があり比較的長期(4~6ヵ月)のより積極的な音声治療と長期的(1~2年)経過観察とが必要であると考えられた.

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© 2015 日本音声言語医学会
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