【はじめに】異なる職業群に対し,自覚的評価に加え,音声の聴覚心理的評価,空気力学的評価,および音響分析評価を行い,職業の違いによる音声障害のリスクについて考察した.【方法】対象は,小学校教師24名,俳優やアナウンサーなどの声の専門的使用群20名,事務職群26名とした.評価は,VHI-10,GRBAS聴覚心理的評価,最長発声持続時間,最長呼気持続時間,呼気乱費係数(最長呼気持続時間/最長発声持続時間),PPQ,APQ,HNR,の8項目について行った.【結果】VHI-10の得点は事務職群で高かった.GRBAS聴覚心理的評価におけるG評定は事務職群でやや高かった.呼気乱費係数は教師群で高かった.音響分析結果は全般的に事務職群で不良であった.【考察】教師は発声の効率が悪いことが示され,教師にとって音声障害予防の対策は重要と考えられた.また音声の自覚的評価や音響分析は声の使用の少ない事務職群で不良であった.音声の特徴は,発声量のみならず多くの因子に影響されると推測されることから,より詳細な声の使用状況と音声障害との関連について今後さらに検討していく必要があると思われた.