2016 年 57 巻 4 号 p. 398-403
われわれは,過去15年間に当科で発声訓練を行った変声障害患者の治療効果を各種検査で検討した.対象は2000年1月から2015年5月までに当科を受診し変声障害と診断され音声治療を受けた男性10例(初診時13~25歳,変声時期12~15歳)とした.
治療前後の評価に,喉頭内視鏡所見,聴覚心理学的評価,客観的評価(空気力学的検査),自覚的評価(VHI-10),声の満足度とした.
その結果,音声治療を受けた10例中,症状の改善により訓練終了できたのは8例であり,音声治療を要した期間は8日から1433日であった.喉頭所見は,治療前に発声時に声門閉鎖不全を認めた症例は10例中4例(40%)で,音声治療後これら4例で声門間隙は消失した.症状の改善により訓練終了できた8例中7例は正常音声となった.客観的評価について,治療後,F0および声域上限・声域下限の低下やMFRの減少を認め,訓練終了できた8例すべての患者で満足が得られた.