小児では,先天性心疾患の評価として心エコーが多く施行される.しかし,成人と同様の評価法では診断エラーや見落としにつながることがあり,ピットフォールに陥らないための小児心エコーの知識を身に付けることが重要である.本稿では,1)小児心エコーの適応,2)小児心エコーの実際,3)ピットフォールを生じやすい代表的な心エコー所見について解説する.1)では,心雑音が小児心エコーの適応として頻度が高く,心雑音の性状や部位から原因となりうる心疾患を想定して心エコーに臨むことが重要である.2)については,小児では先天性心疾患を評価することが多く,標準的な心エコー断面で意図した画像を描出できるとは限らない.そのため,まずは区分診断法により心構造を確認することが必要となる.小児では心窩部断面から心臓全体を観察することが容易であり,さらに画像を上下反転してプローブを腹側から頭側へスイープすることで,解剖学的な上下左右の位置関係と体静脈‐心房‐心室‐大血管のつながりを評価することができる.3)ピットフォールを生じやすい心エコー所見の代表例として,心室中隔欠損に伴う左室‐右房交通と三尖弁逆流,多孔性心室中隔欠損,心房中隔欠損の過大評価・誤認,修正大血管転位における左室と右室の位置があり,これらの注意点を解説する.小児の心エコーはバリエーションが多く,本稿のみではピットフォールに陥らないための知識は必ずしも十分ではない.エコー所見の判断が難しい時は記録した画像を,専門医や経験の多いエコー技師に一つ一つ確認していくことが,ピットフォールに陥らないために最も大切なことである.
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