2005 年 45 巻 9 号 p. 719-726
近年, 摂食障害は小児期発症から中年期発症までみられるようになり, ますます多様化している.他方, 児童精神医学の分野ではアスペルガー障害が注目を集めている.このような中でアスペルガー障害をもともと有していたと思われる神経性無食欲症(AN)患者を経験したので報告した.2例ともANで受診したことにより, 初めてアスペルガー障害の存在も明らかになった.2例ともDSM-IVの診断基準に基づいてAN, アスペルガー障害と診断され, またアスペルガー障害の特徴はANの発症に関与していた.アスペルガー障害では, 相互的人間関係, 言語的・非言語的コミュニケーション能力, 限定された行動・興味・活動が問題になるが, ANの治療過程において, これらの問題, 特徴を意識した対応が必要であった.今後, アスペルガー障害を伴った摂食障害の増加も予想され, 新たな視点も必要になってきている.