日本小児腎臓病学会雑誌
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海外論文紹介 : Tacrolimus as a steroid-sparing agent for adults with steroid-dependent minimal change nephrotic syndrome
田中 完
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2008 年 21 巻 1 号 p. 77-79

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抄録

 成人ステロイド依存性ネフローゼ症候群 (SDNS) において, cyclophosphamide (CYC) とcyclosporin (CYA) はステロイド薬減量効果を期待できる薬剤とされるが, tacrolimus (TAC) も有用かどうかを前方視的に検討した。
 26名の成人SDNSを2群に分け, 14名はプレドニン (0.5 mg/kg) に6ヵ月間, 月1回のCYCパルス療法 (750 mg/m2) 併用 (iv-CYC) を, 12名は同量のプレドニンに6ヵ月間のTAC (trough値を4~8ng/ml) 療法を併用, プレドニンは経過中に漸減中止とした。
 経過中各群で1名ずつが副作用のため離脱したが, 6ヵ月間の治療終了時点でCYC群は76.9% (10/13名), TAC群は90.9% (10/11名) が完全寛解に至った。完全寛解に至るまでの期間はTAC群で有意に短かった (p=0.031)。CYC群の8名 (61.5%), TAC群の8名 (72.7%) がステロイド薬中止可能となった。治療期間終了後平均23.0±10.1ヵ月の観察期間で, 治療により完全寛解となったCYC群の60% (6/10名), TAC群の50% (5/10名) で寛解が維持された。CYC群の4名, TAC群の5名は再発があり, CYC群の2名は頻回再発となった。
 6ヵ月間のTAC療法はCYCよりも早期に寛解導入が可能であり, 有意なステロイド薬減量効果が確認された。

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© 2008 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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