日本臨床麻酔学会誌
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29 巻, 3 号
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日本臨床麻酔学会第27回大会 パネルディスカッション—硬膜外麻酔スタンダード—
  • 齊藤 洋司
    2009 年 29 巻 3 号 p. 229
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
  • 土井 克史
    2009 年 29 巻 3 号 p. 230-238
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      硬膜外麻酔において, 薬剤の種類としては, アミド型局所麻酔薬 (リドカイン, メピバカイン, ロピバカイン) を使用する. 作用発現時間, 作用持続時間などの性質と手術手技の侵襲度, テストドーズでの使用かどうかを考え決める. また, 使用薬剤の濃度については, 等しい投与量の場合, より高濃度の局所麻酔薬の使用で, より強力な神経遮断効果を得られる. 全身麻酔併用の場合も高濃度の局所麻酔薬を使用する方が全身麻酔薬の必要量は少なく, 安定した麻酔深度が得られる. 局所麻酔薬投与方法については, 持続注入法では, 神経遮断範囲は徐々に狭くなり, 間欠注入法に比べて神経遮断域の広がりは悪い. 間欠投与が望ましい.
  • 横山 正尚
    2009 年 29 巻 3 号 p. 239-248
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      硬膜外麻酔が優れた麻酔法であることは, 術中に単独あるいは全身麻酔と併用する際において, また, 術後鎮痛においても認識され, その適応は非常に広くなってきている. しかし, 硬膜外麻酔には血腫, 膿瘍, 神経損傷など重篤な合併症のリスクがある. 特に, 抗凝固療法を受けている患者の手術の増加に加え, 術後血栓症予防療法が定着しつつある現状で, 硬膜外血腫のリスクは大きな問題となっている. Patient controlled analgesia (PCA) や末梢神経ブロックの普及で周術期の鎮痛法の幅も広がってきた. 個々の患者のリスクとベネフィットを考慮し, 患者と医療従事者が十分に適応を検討して硬膜外麻酔を実施する時代になったといえる.
日本臨床麻酔学会第28回大会 パネルディスカッション—小児麻酔におけるリスクマネジメント—
  • 外 須美夫, 鈴木 康之
    2009 年 29 巻 3 号 p. 249
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
  • 香川 哲郎, 鈴木 毅, 高辻 小枝子, 大西 広泰, 池島 典之
    2009 年 29 巻 3 号 p. 250-257
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      小児麻酔における偶発症は新生児・乳児で多く, 麻酔管理が原因となるもののうちでは高度低酸素血症が多いことが特徴である. 小児の術前評価は, 小児特有のリスクを把握し, 偶発症を予防するための最初のステップとしてリスクマネジメント上重要である. 小児の術前評価には小児麻酔や小児についての知識および経験が必要であるが, 麻酔科医, 外科医, 小児科医や看護師などスタッフ間の良好な連携や, 親やこどもとの十分なコミュニケーションとそれを可能にする診察スペースなども重要な役割を果たす. さらに得られた情報を共有し, 発生しうるリスクについて準備, 対応することが事故を予防することにつながると考えられる.
  • 木内 恵子, 橘 一也, 春名 純一, 竹内 宗之
    2009 年 29 巻 3 号 p. 258-265
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      小児の挿管困難の発生率についてはあまりデータがない. 成人との比較も困難である. さまざまな挿管困難用の器具が開発され, 市販されているが, 成人向けに作成されているものが多く, 小児では使用できるものが限られる. 最も頼りになるのは, ファイバー用マスクあるいは反対側の鼻腔から挿入したエアウェイを使用して全身麻酔下で換気を行いながらのファイバー挿管である. 挿管困難で, しかも換気できなくなったとき, ラリンジアルマスクは重要な武器になる. ラリンジアルマスクを通しての挿管も身につけておくべき重要な手技である. 成人と同様, 挿管困難を予知し, 挿管困難に遭遇したときのためのアルゴリズムを準備しておくことが大切である.
  • 遠山 悟史, 近藤 陽一, 鈴木 康之, 伊東 祐之, 橋本 学, 羽鳥 文麿
    2009 年 29 巻 3 号 p. 266-274
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      多くの研究から痛みに関する伝達経路は妊娠25週前後の胎児期にはすでに完成しているといわれており, 麻酔科医が対象とするほとんどすべての年齢層の患児は適切な疼痛管理が提供されなければならない. 鎮痛方法そのものは基本的には成人のものと同様であるが, 小児の特徴をよく理解しなければ良好な鎮痛が得られないだけでなく, さまざまな合併症をまねくこととなる. 鎮痛方法の理解だけでなく, 自らの言葉ではうまく痛みを表現できない患児に対する細やかな心配りと, 麻酔科医だけでなくすべての医療従事者の疼痛管理への理解と協力を得ることが, 良好な疼痛管理を得るのに必要なことであると同時にさまざまな合併症に対する重要なリスク対策となる.
講座
  • 山蔭 道明
    2009 年 29 巻 3 号 p. 275-289
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      ブピバカインは, ピペコロキシリジド骨格を有し, エナンチオマー (光学異性体) が存在する. S (-) -エナンチオマーがレボブピバカイン, R (+) -エナンチオマーがデクスブピバカインである. ポプスカイン®注は, S (-) -エナンチオマーであるレボブピバカインのみからなる製剤で, マーカイン® (ブピバカイン) は2つのエナンチオマーの比率が50: 50のラセミ体である. 2つのエナンチオマーはともに活性を示すが, レボブピバカインはデクスブピバカインよりも活性が高く, 心血管系への作用が低い. 本邦では2008年4月に承認され, 0.25%製剤が「術後鎮痛 (硬膜外投与) 」 , 0.75%が「硬膜外麻酔 (手術中) 」の効能・効果を取得している.
症例報告
  • 大路 牧人, 高田 正史, 村田 寛明, 北條 美能留, 趙 成三, 澄川 耕二
    2009 年 29 巻 3 号 p. 290-293
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      長期オピオイド服用患者の周術期疼痛管理を経験したので報告する. 54歳, 女性. 右大腿骨転移性骨腫瘍に対し髄内釘が予定された. 癌性疼痛にて徐放性オキシコドン100mgと速放性オキシコドン5~15mgを内服していた. また気管支喘息による呼吸不全を合併していた. 硬膜外麻酔により疼痛が消失すると投与中のオキシコドンの相対的過量が生じる恐れがあるため, 術当日朝の徐放性オキシコドンを中止した. 術中は0.75%ロピバカインを用いた硬膜外麻酔にプロポフォール鎮静を併用して麻酔管理を行ったが, 呼吸抑制はなかった. 術後は持続硬膜外鎮痛と速放性オキシコドンのみで管理したが, 著明な術後痛や退薬症候は認めなかった.
  • 小林 康夫, 吉川 修身
    2009 年 29 巻 3 号 p. 294-299
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      右肩関節制動術予定患者に全身麻酔下に神経刺激装置を用いて斜角筋間ブロックを行った. 途中, 首を左右に振る動きがあった以外に異常筋収縮はなかった. ブロック直後に両側瞳孔散大を伴う血圧低下をきたしたため, 全脊麻と判断し急速輸液と昇圧薬投与で対処した. 術後の意識および自発呼吸の回復は速やかで右上肢以外に麻痺を認めなかったが, 翌朝になっても右上肢麻痺が回復せず左上肢のしびれも訴えた. 頸髄MRIではC2~7に右側優位のT2高信号病変を認め, 梗塞性脊髄損傷が疑われた. 斜角筋間ブロックは, 短い針を用い尾側に明確に傾けるなど椎間孔に進入させない工夫が必要で, 神経刺激法を用いても全身麻酔下には行わない方が安全である.
  • 黒田 茜, 荻野 祐一, 齋藤 繁
    2009 年 29 巻 3 号 p. 300-304
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      不妊治療中に第 XII 因子欠乏症が指摘された妊婦での帝王切開術に対する麻酔を3例経験した. これら3症例では, 不妊治療精査で第 XII 因子欠乏症が指摘され, 抗凝固療法後に妊娠, 全身麻酔で帝王切開術が予定された. そのうち1症例で執刀直後および術後に, 一時的な末梢動脈血酸素飽和度低下を認め, 肺血栓塞栓症が示唆された. 不妊症治療後の妊婦は, 線溶系の機能低下による過凝固傾向にあり, その周術期に肺血栓塞栓症のリスクに留意しなければならない.
  • 小林 賢輔, 望月 利昭, 小林 充, 秋永 泰嗣, 川島 裕也, 佐藤 重仁
    2009 年 29 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      癒着胎盤とは, 胎盤絨毛が子宮筋層に侵入し胎盤剥離不能となる疾患である. 本症を疑う場合, 大量出血に伴う合併症に注意が必要である. 他院にて3週間前に経腟分娩した30歳の女性. 産褥期出血にてHb 3.7g/dLとなり当院緊急入院となった. 術前より輸血され, 全身麻酔下に経腟的胎盤剥離を試みたが, 出血のため剥離不能だった. 単純子宮全摘術に術式変更され止血された. 病理診断により癒着胎盤と診断された. 癒着胎盤は母体死亡原因の約3%である. 画像診断による術前診断は難しい. 出血性ショックの増悪や凝固能異常が懸念される場合があるため区域麻酔よりも全身麻酔が望ましいと思われた.
  • 松田 善文, 肥塚 恭子, 新井 としみ, 安岡 朝子
    2009 年 29 巻 3 号 p. 311-315
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      スプリングを誤嚥し, 披裂喉頭蓋ヒダに食い込んだ症例を報告する. 15ヵ月, 女児. 身長76cm, 体重7.6kg. 前医にて声門部付近のスプリングが認められ, 摘出目的で当院搬送となった. 導入は緩徐導入で行い, ラリンジアルマスク (以下, LMA) を挿入した. 気管支ファイバーでスプリングを確認, 鉗子で摘出を試みるも摘出に難渋した. LMAを抜去し喉頭展開したところ直視下でスプリングが確認できたため, ケリー鉗子を用いてそれを摘出した. その後ただちに経口的気管挿管を施行し, 患児は集中治療室へと搬送された. 手術後3日目で抜管, 術後6日で退院となった.
  • 原 哲也, 稲冨 千亜紀, 小出 史子, 前川 拓治, 趙 成三, 澄川 耕二
    2009 年 29 巻 3 号 p. 316-320
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      エホバの証人に対する帝王切開術の麻酔を, 動脈圧心拍出量 (APCO) から算出した酸素供給量を指標として管理した. 患者は40歳代の女性. 身長150cm, 体重56kg. 子宮筋腫合併高齢出産であったが, 宗教的信条から輸血を拒否したため, 帝王切開術が予定された. 麻酔は0.5%高比重ブピバカインによる脊髄くも膜下麻酔で行い第4胸髄レベル以下の知覚低下を得た. 術後鎮痛は0.2%ロピバカインによる持続硬膜外麻酔で行った. 同種血および自己血輸血は行わず, 貧血による酸素供給量の減少に対して, 輸液および昇圧薬で心拍出量を増加させ代償した. APCOの測定は低侵襲であり, 酸素供給量を指標とした麻酔管理に有用であった.
短報
紹介
  • 田畑 正久
    2009 年 29 巻 3 号 p. 325-334
    発行日: 2009/05/15
    公開日: 2009/06/18
    ジャーナル フリー
      医療と仏教は「生・老・病・死」の四苦を共通の課題とする. 医療は元気でいきいきした「生」を目指している. そのために「老病死」の現実を受容する視点に欠けていた. 治療の概念からいうと老い, 病み, そして死ぬことは敗北, 不幸の完成である. 四苦に対応するために, 最終ゴールは不幸の完成でよいのか.「老」とは「老成」「長老」の言葉が示すように本来, 成熟することへの敬称である. 成熟は仏教の智慧と深い関係があり, 仏教で成熟した人格者は「人間に生まれてよかった. 生きてきてよかった. 死んでいくこともお任せです」と鷹揚に生きていかれる. 医師の「師」が意味するものは人生全体を見渡して, 生きていることの喜びと老病死を受容し, 四苦を超える道への素養をもつ人格者であることが期待されていることと考える.
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