園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
原著論文
  • 橘 温, 八幡 茂木
    2007 年 76 巻 3 号 p. 175-184
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    早生ウンシュウの早期加温ハウス(加温開始:12 月上旬),普通加温ハウス(加温開始:1 月上旬)および慣行の露地において,有機物施与量(敷きわら 1.5 t/10 a/year とその 2 倍量)や施肥量(窒素,リン酸,カリ:27, 22, 24 kg/10 a/year とその 1.5 倍量)を組み合わせた試験区で‘宮川早生’と‘興津早生’を計画密植で栽培した.苗木の植え付け翌年の 3 年生時から 12 年生時までの 10 年間の収量や収量に影響を及ぼす要因について比較検討した.収量や葉面積指数(LAI),花蕾数などの多くの調査項目は,有機物施与量や施肥量が異なっても有意差を示さなかった.早期加温ハウスでは,大きな年次変動や間伐による収量の低下がみられるものの,普通加温ハウスと比較して土地面積当たり収量が優っていることが実証された.‘興津早生’は‘宮川早生’と比較して,第 1 次間伐樹の伐採まで LAI の増大が早く,初期収量がわずかに多い傾向にあった.いくつかの要因と土地面積当たりで表した収量との関係を検討した結果,栽培条件や品種が異なっても LAI が収量に最も強く影響を及ぼす要因であることが明らかとなった.着蕾数の少なかった早期加温ハウスでは,着果率が高く,着蕾数と収量との間にやや強い相関関係が認められた.
  • 加藤 一幾, 金山 喜則, 大川 亘, 金浜 耕基
    2007 年 76 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    シーベリー(Hippophae rhamnoides L.)はグミ科の小果樹で,果実が不飽和脂肪酸とビタミンに富む有望な園芸作物である.本研究では,栽培上大きな利点であるシーベリーの共生窒素固定について調査した.シーベリーに着生した根粒の形態的な特徴は,アクチノリザル植物とフランキアとの共生によって形成される根粒の一般的な特徴と一致した.無窒素栽培条件下において,根粒摩砕液の接種によって根粒を着生した個体は,接種を行わなかった非着生個体に比べて成長が著しく促進された.また,根粒新鮮重と植物体の成長との間に正の相関関係が認められた.圃場における根粒のニトロゲナーゼ活性は,気温が高く光合成が盛んに行われている 5 月から 9 月にかけて高かった.硝酸態窒素によるニトロゲナーゼ活性の阻害は,マメ科植物の根粒においてよく調べられていることから,シーベリーにおいても同様の阻害現象について調べた.ニトロゲナーゼ活性は,5 日間程度の短期間であれば 30 mM までの高濃度の硝酸態窒素の処理によっても阻害されなかったが,20~30 日間の 5 および 10 mM の硝酸態窒素の処理によって,明らかに阻害された.
  • Lee Sang-Hyun, 崔 晉豪, 金 月洙, Park Yong-Seo, 弦間 洋
    2007 年 76 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    ナシ‘新高’果実を用いて果肉石細胞発達とパーオキシダーゼ活性に及ぼす塩化カルシウム散布の影響について調査した.15 年生‘新高’樹全体に満開後 20 日目から 10 日間隔で 4 回,塩化カルシウム溶液(0, 0.3, 0.5, 1.0%)を滴り落ちる程度に散布した.収穫果実および葉内のカルシウム含量は 0.5 および 1.0%溶液の散布により増加した.フロログルシノール染色した果肉中石細胞を光学顕微鏡下で観察したところ,0.5%溶液の散布によって明らかにその量が減少した.すなわち,200 μm2 以下の石細胞群の数は増加するものの,200~400 μm2 の中型石細胞群および 400 μm2 以上の大型石細胞群数は有意に減少した.果肉のパーオキシダーゼ活性は,満開後 60 日目に上昇し,その後果実発育にともない下降した.塩化カルシウム無処理果実のパーオキシダーゼ活性は,0.5%溶液散布果実より高く,細胞壁画分の結合型および遊離型パーオキシダーゼ活性も同様に高かった.本調査から,塩化カルシウムの散布によりナシ果実の石細胞数とその大きさが減少することが明らかとなり,結合型および遊離型パーオキシダーゼ活性低下によるリグニン化が進まないことがその要因であることが示唆された.
  • ピリーダスティジット バンナラット, 北島 宣, 山崎 安津, 尾形 凡生, 長谷川 耕二郎
    2007 年 76 巻 3 号 p. 197-204
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    カラタチ (Poncirus trifoliata (L.) Raf.) 染色体のクロモマイシン A3 (CMA) 染色およびプロピジウムイオダイド (PI)/4'-6-ジアミジノ-2-フェニルインドール (DAPI) 染色を行った.PI/DAPI 染色の PI (+) 領域は CMA 染色の CMA (+) 領域と一致しており,PI (+) シグナルは CMA (+) シグナルに比べ安定していた.PI (+) シグナルの相対的な大きさを加味したバンドパターンとシグナルのない染色体の形態から,18 本のカラタチ染色体は 9 グループ (2B1 + B2 + B3 + 4D1 + 2D2 + D3 + D4 + 2EL + 4E) に分けられた.ディゴキシゲニン-ローダミン(赤色)でラベルしたカラタチDNAとビオチン-FITC(緑色)でラベルしたウンシュウミカン‘南柑 20 号’(Citrus unshiu Marcow.) または‘土佐文旦’(Citrus maxima (Burm.) Merr.) DNA の二重プローブを用いてカラタチ染色体に genomic in situ hybridization (GISH) を行った.明瞭な GISH シグナルが PI (+) 領域と同じ位置に検出された.GISH シグナルの色調はビオチンプローブをウンシュウミカンとしたときは黄色と緑色,‘土佐文旦’としたときは黄色と赤色であった.このことから,カラタチは‘土佐文旦’よりウンシュウミカンに近縁であると考えられた.すべての B 型染色体の二次狭窄部と D4 型染色体端部の GISH シグナルは,いずれのビオチンプローブでも黄色または緑色であったことから,カラタチ染色体のこの部位はウンシュウミカンおよび‘土佐文旦’ゲノムと相同性が高く,保存領域である可能性が示唆された.
  • Malik Nasir S. A., Bradford Joe M.
    2007 年 76 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    様々な環境条件下での植物の応答や発育過程の制御にポリアミンが関与していることが知られている.オリーブではポリアミン含有量の季節変化や温度条件のポリアミン含有量への影響に関しては報告されているものの,栄養成長から生殖成長のような発育相の変化の過程にポリアミンがどのように関わっているのかはほとんど分かっていない.本研究では,着花誘導を行わない場合と低温処理などにより着花誘導を行って栄養成長から生殖成長に移行させた場合のオリーブ葉の遊離ポリアミン(プトレシン,スペルミジン,スペルミン)含有量の比較を行った.プトレシンとスペルミンは対照区である栄養成長を行っているオリーブの葉に比べて,低温処理により着花誘導を行った葉においては非常に高い含有量を示した.しかし,このようなポリアミンの増加は低温処理せずに着花誘導を行った樹では認められなかったことから,オリーブ葉での遊離型ポリアミン含有量の増加は発育相の変化によるものではなく,温度の影響によって引き起こされたものだと考えられた.このように遊離ポリアミン含有量はオリーブの生殖成長への相転換とは対応していないことが明らかとなった.一方,腋芽の遊離ポリアミン含有量は花芽へと発達するにともない増加したが,開花に至って減少した.花芽と比べて未熟果および成熟果におけるポリアミン含有量は少なかった.
  • 江角 智也, 田尾 龍太郎, 米森 敬三
    2007 年 76 巻 3 号 p. 210-216
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ‘豊水’では,開花時に,ひとつの花芽からおよそ 8 個の花と 1 から 2 枚の葉が基部から順に展開・開花する.マルメロではひとつの花芽から 8 枚の葉と 1 個の花が展開・開花する.これらの花序形成の差異を明確にするために,ニホンナシおよびマルメロの花芽形成時における花序の発達を走査型電子顕微鏡によって観察して比較した.ニホンナシ‘豊水’では,6 月下旬に茎頂部が肥大して,苞葉を形成しながら花序分裂組織が盛り上がると同時に,苞葉の葉腋に側花の原基が形成された.この時点で側花の原基数は 4 から 5 個であるが,花序分裂組織の先端が頂花の原基に分化し,さらに未分化であった外側の苞葉の腋生分裂組織が側花の原基に分化することで,最終的におよそ 8 個の花原基からなる花序が花芽中に形成された.マルメロの花芽分化は 10 月の下旬から 11 月に開始することが観察された.それまでにおよそ 8 枚の葉原基が形成されていたが,この時点でそれらの葉腋には腋芽は観察されなかった.茎頂部全体が大きく肥大すると同時に 5 つのがく片の原基が順次分化し,1 個の花原基が形成された.これらの観察結果から,ニホンナシとマルメロの花序の差異は,葉あるいは苞葉の原基の腋生分裂組織が花原基に分化するか否かによってもたらされると考えられた.
  • 渋谷 俊夫, 中島 はるか, 清水(丸雄) かほり, 瓦 朋子
    2007 年 76 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    低気温貯蔵中におけるトマトおよびナス接ぎ木挿し穂の接ぎ木接合部への温水供給が,接ぎ木接合部の活着強度および貯蔵後の成長に及ぼす影響を調べた.接ぎ木挿し穂の台木の下端部から接合部までを 12~37℃の水に浸けて,気温 9~12℃で 4 日間貯蔵した.接ぎ木の活着強度の指標として接合部の引っ張り強度を測定した.貯蔵開始 4 日後におけるトマト接ぎ木挿し穂の引っ張り強度は,接合部温度 23~27℃で最も大きくなった.貯蔵開始 4 日後におけるナス接ぎ木挿し穂の引っ張り強度は,接合部温度 29℃まで貯蔵中の接合部の温度の上昇にともない大きくなる傾向がみられた.貯蔵開始 4 日後に接ぎ木挿し穂をバーミキュライト培地に挿し木して,グロースチャンバーで 4 日間育成した.貯蔵後の成長は,高い引っ張り強度を示した試験区ほど大きくなる傾向がみられた.貯蔵開始 4 日後における接ぎ木挿し穂の水分状態,ガス交換およびクロロフィル蛍光パラメータを調べることによって,貯蔵中における接合部への温水供給が接ぎ木挿し穂の貯蔵性に及ぼす影響を調べた.貯蔵後における穂木の葉内水ポテンシャルおよび葉面コンダクタンスは,接ぎ木接合部を 28℃に加温した水に浸けた試験区において加温しない水に浸けた試験区よりも有意に大きかった.貯蔵後におけるクロロフィル蛍光パラメータ ΦPSII および電子伝達速度は,接ぎ木接合部を加温した水に浸けた試験区では貯蔵前と有意な差がみられなかったが,加温しない水に浸けた試験区において貯蔵前よりも有意に小さかった.以上の結果から,低気温貯蔵中においても,接ぎ木挿し穂の接ぎ木接合部を温水に浸けることによって,接合部の活着および貯蔵性を高め,さらに貯蔵後における成長を促進できることが示された.
  • 松村 篤, 堀井 幸江, 石井 孝昭
    2007 年 76 巻 3 号 p. 224-229
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    アーバスキュラー菌根 (AM) 菌が菌根性植物の抗酸化酵素活性に及ぼす影響を調査する研究は広く行われ,AM 菌が根に感染すると宿主植物の抗酸化酵素活性(スーパーオキシドジスムターゼ (SOD) 活性およびカタラーゼ (CAT) 活性)が高まり,耐乾性や耐病性が増すことが報告されている.一方,AM 菌が非菌根性植物の抗酸化酵素活性に及ぼす影響を検討することは殆ど行われていない.そこで,本研究では非菌根性植物ダイコンの栽培中に菌根性植物バヒアグラスを間作することによって,AM 菌がダイコンの成長および抗酸化酵素活性に及ぼす影響について調査した.ダイコンの生育は AM 菌のみを接種した区では対照区と差がみられなかったが,バヒアグラスを間作した AM 菌のみを接種した区では有意に低下した.根内部への AM 菌菌糸の侵入はバヒアグラスを間作したときにだけ観察され,根周辺に多数の菌糸あるいは胞子がみられたが,根内に樹枝状体は形成されていなかった.AM 菌が根内に侵入したとき,ダイコン根組織内のタンパク質含量は増加したが,SOD 活性および CAT 活性は低下する傾向がみられた.これらの結果より,AM 菌の増殖を著しく促進するバヒアグラス間作で助長される菌糸の非菌根性植物への強制的侵入は植物体の成長を抑制することが示唆された.
  • 吉田 康徳, 高橋 春實, 神田 啓臣, 金浜 耕基
    2007 年 76 巻 3 号 p. 230-236
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    日長処理と植物成長調整物質処理されたジネンジョ (Dioscorea japonica) の主枝,むかご,新芋および花穂の発育に及ぼす種芋重の影響について検討した.同じ植物成長調整物質処理と種芋重で比較した場合,主枝の長さは全生育期間を通して,8 時間日長区より 24 時間日長区で長かった.さらに,同じ日長時間と種芋重で比較した場合,主枝の長さは,8 時間日長下の種芋重 25 g から育てられた個体(以下,種芋重 25 g の個体と略記)を除いて,ウニコナゾール-P 処理区より対照区とジベレリン処理区で長かった.これらの傾向は,種芋重 25 g の個体より,種芋重 50 g の個体で大きかった.種芋重 25 g の個体では,最終の新芋重およびむかごと新芋を加えた合計重は 8 時間日長区より,24 時間日長区で逆転して大きくなったが,種芋重 50 g の個体では,最終掘り取り時でも,24 時間日長区より 8 時間日長区の方が大きいままであった.これは種芋重 50 g の個体より,種芋重 25 g の個体でむかごと新芋の発育開始時期が早いためである.その結果,種芋重 25 g の個体では,24 時間日長下でもジベレリン処理によって,新芋重がやや増加した.8 時間日長下の種芋重 25 g と 50 g の個体では,花穂の発育時期のピークが,6~7 月の 1 回しか認められないのに対して,24 時間日長下の種芋重 25 g と 50 g の個体では,6~7 月と 9~10 月と 2 回の花穂の発育時期のピークが認められた.6~7 月の 1 回目の花穂の発育時期のピークの場合,1 個体当たりの花穂数は,8 時間日長より 24 時間日長で多く,8 時間日長下では,ジベレリン処理で抑制された.これらの傾向は,種芋重 50 g の個体方が大きかった.
  • 平井 剛, 小宮山 誠一, 山口 敦子, 山本 愛子, 増田 清
    2007 年 76 巻 3 号 p. 237-243
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    メロン 8 品種を用いて,収穫後の果実軟化を官能評価および物性測定機器により評価し,追熟特性における品種間差異の客観的評価を試みた.また,果実軟化とペクチン質の溶解度変化との関係についても調査した.果実の軟化速度は品種により大きく異なり,‘サッポロキング ER’,‘めろりん’および‘キングメルテー’でもっとも早く,‘ルピアレッド’および‘アールスナイト春秋系’ではやや緩やかであり,‘いちひめ’‘レッド 113’および‘G08’でもっとも遅かった.テクスチャーアナライザーにより測定した Hardness 値と官能評価による硬さ評価値との間には,強い対数関係 (R2 = 0.850) が認められ,軟化の程度を客観的に評価することが可能であった.また,果肉に含まれるペクチン質の可溶化速度においても同様の品種間差異が認められた.さらに,Hardness 値と水溶性ペクチン含量との間には有意な負の相関が認められ,両者は指数関係にあると推察された (R2 = 0.490).このことから,ペクチン質の可溶化速度の違いが,果実軟化速度の品種間差異の一因であると考えられた.
  • Yang Xinyu, Wang Qiuhong, Li Yuhua
    2007 年 76 巻 3 号 p. 244-249
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    トルコギキョウの小胞子と大胞子の形成および雄性配偶体と雌性配偶体の発達過程における発生学的な特徴を顕微鏡下で観察した.結果は次のとおりである.1.約壁の形成は双子葉植物型であった.タペート組織は異形で腺状型であった.葯隔側のタペート細胞は放射状に伸長していた.2.小胞子細胞の減数分裂と細胞質分裂は同時に進行し,小胞子四分子は四面体型であった.3.成熟した花粉粒は 2 細胞からなり,3 溝粒であった.4.2 心皮合成の子房は 1 室で側膜胎座であった.胚珠は多数産し,倒生であった.5.珠心の表皮下の胞原細胞は直接大胞子母細胞を発達させた.大胞子母細胞は順に減数分裂を行い,直線上あるいは T 字状に並ぶ 4 つの大胞子を形成した.そのうち合点の大胞子が雌性配偶体になることが観察された.6.胚嚢の形成はポリゴナム型であった.受精前に 2 つの極核は融合して二次的な核を形成した.成熟した胚嚢は 7 細胞であった.7.1 つの胚珠に 2 つの大胞子配偶体あるいは 2 つの胚嚢があることが非常に低い割合で認められた.
  • 岸本 早苗, 住友 克彦, 八木 雅史, 中山 真義, 大宮 あけみ
    2007 年 76 巻 3 号 p. 250-257
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    9 種のキク科植物における橙色と黄色花色の発現機構を明らかにするために,それぞれの種の橙色品種および黄色品種の花弁における総アントシアニン量,総カロテノイド量およびカロテノイド成分について解析を行った.これらの植物は黄色品種も橙色品種も黄色成分として共通にカロテノイドを含んでいた.橙色品種ではさらに 3 通りの方法によって赤みを加え,橙色を形成していることが明らかになった.キク,ガーベラおよびジニアの橙色花弁は,黄色花弁と比較してより多くのアントシアニンを蓄積していた.ヒマワリ,アフリカンマリーゴールドおよびフレンチマリーゴールドの橙色花弁は黄色花弁よりも顕著に高い濃度のカロテノイドを蓄積していた.キンセンカ,ガザニアおよびオステオスペルマムの橙色花弁はより多くの赤みの強いカロテノイドを蓄積していた.これらの方法を組み合わせることによって様々な色調の橙色を作り出すことが可能であると考えられた.
  • 今堀 義洋, 岸岡 泉, 上村 和子, 牧田 英二, 藤原 ひとみ, 西山 由香, 石丸 恵, 上田 悦範, 茶珎 和雄
    2007 年 76 巻 3 号 p. 258-265
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/25
    ジャーナル フリー
    サツマイモの生理的反応および品質に及ぼす低酸素短期間処理の影響を調べるために 0%O2 あるいは 0%O2 の連続通気で 20℃下に 7 日間サツマイモを貯蔵した.貯蔵中低酸素障害の兆候や腐敗は観察されなかった.しかしながら,0%O2 貯蔵では可溶性固形物含量が増加し,異臭も感じられた.その異臭の程度は貯蔵中アセトアルデヒドやエタノール含量の増加とともに大きくなった.エタノール含量はアセトアルデヒド含量よりも多かった.アセトアルデヒド含量は貯蔵中 1%O2 と空気貯蔵では低いレベルのままであったが,0%O2 では著しく増加した.ピルビン酸脱炭酸酵素 (PDC) の活性は 0%O2 あるいは 1%O2 では 7 日間の貯蔵で空気貯蔵の 3.1 倍および 2 倍に増加した.アルコール脱水素酵素 (ADH) の活性は 0%O2 あるいは 1%O2 では 7 日間の貯蔵で空気貯蔵の 1.6 倍および 1.7 倍に増加した.ADH 活性は PDC 活性の約 10 倍であった.空気貯蔵のサツマイモ磨砕液の pH は貯蔵中一定であったが,0%O2 では増加し,1%O2 で減少した.PDC は pH 5.5–7.0 の範囲で安定性を示したのに対して,ADH は pH 6.0–7.5 の範囲で安定であった.PDC のピルビン酸に対する Km 値は 0.56 mM であったのに対して,ADH のアセトアルデヒドに対する Km 値は 0.19 mM であった.以上の結果から,低酸素下ではエタノール発酵が進行するものの,低酸素短期間処理は棚持ち期間を延ばす上で低温処理の代わるものとしての可能性がある.
feedback
Top