園芸学会雑誌
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原著論文(英文)
生理的落果との関連からみたモモ‘清水白桃’の胚乳細胞と吸器の形態的変化
福田 文夫吉村 隆二松岡 寛美梅田 晶子浅野 良美久保田 尚浩
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2006 年 75 巻 5 号 p. 365-371

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抄録

モモにおいて果実発育第 2 期末から第 3 期初めに起こる生理的落果の発生過程を解剖学的に明らかにするために,摘果程度の異なる‘清水白桃’を用いて,種子,特に胚乳の形態を 4 年間調査した.弱摘果区あるいは標準摘果区に比べて強摘果区では生理的落果率が有意に高かった.落果盛期に強摘果樹から落下した果実の胚乳長は,満開65日後に採取した樹上果の胚乳長に相当し,また胚長はその時期の樹上果の胚長よりも小さかった.落下した果実の胚乳と胚の細胞はともに細胞質の収縮や細胞核の消失といったネクロシスの典型的な症状を呈した.強摘果区では,樹上果における胚乳の細胞核の崩壊が,落下した果実における胚乳の成長停止時期に当たる満開66日後に認められ始めた.果実発育第 2 期の前半に採取した樹上果について,合点側吸器の形態を観察したところ,強摘果区,標準摘果区ともに,第 2 期初めにはほとんどの吸器が合点に到達していたが,満開54日後以降,強摘果区の多くの果実に合点側吸器の収縮異常が認められた.これらの結果は,落下する果実では以下のような一連の種子の退化過程の現象が起こっていることを示唆した.すなわち,合点側吸器の収縮や胚成長の抑制を引き起こす要因が発生した後,合点側吸器の収縮によって胚乳における貯蔵養分の蓄積量が低下するために胚への養分供給が劣り,最終的に胚の壊死が生じると考えられた.

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