日本輸血細胞治療学会誌
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原著
CryoSeal® FSシステムによる全自己フィブリン糊を外科手術時の止血補助に使用した多施設共同一般臨床試験結果
清水 勝脇本 信博鶴丸 昌彦臼井 雅昭小山 信彌比留間 潔
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2009 年 55 巻 5 号 p. 604-610

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抄録

目的: CryoSeal®で調製した全自己フィブリン糊の臨床での有効性と安全性の評価.
背景: 外科手術時の滲出性出血コントロールは依然として外科医にとって重要な課題である.医薬品や用手法のフィブリン糊が止血剤として頻用されているが,病原体伝播やアレルギー反応等の可能性は完全には否定できない.
方法: 74人の術前貯血式自己血輸血を実施する手術患者が多施設共同一般臨床試験に参加した.CryoSeal®で自己クリオプレシピテートと自己トロンビンを調製し,74人のうち62人が止血効果を評価しえた.
結果: 263.8±26.7mlの血漿からそれぞれ5.3±1.2mlの自己クリオプレシピテートとトロンビンが調製できた.In vitroでの凝固時間の中央値は4.1秒(範囲1.3∼195.2秒)であった.滲出性出血に対する止血効果は,62人のうち54人(87%)で良好であった.トロンビン活性が≥20U/mlの患者の良好率が96%(46人/48人)であったのに対し,<20U/mlの患者の良好率は54%(7人/13人)であり,止血効果に有意な差が認められた(p<0.001,Fisher's test).全自己フィブリン糊によると考えられる合併症は認められなかった.
結論: CryoSeal®は全自己フィブリン糊を短時間で調製でき,外科手術時の止血補助に有効であった.我々の試験結果は,全自己フィブリン糊は医薬品や用手法フィブリン糊と同様に外科手術時の止血補助に利用できることを示している.

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© 2009 日本輸血・細胞治療学会
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