自然言語処理
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日本語を援用した日本手話表記法の試み
松本 忠博原田 大樹原 大介池田 尚志
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2006 年 13 巻 3 号 p. 177-200

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抄録

日本手話をテキストとして表現するための表記法を提案する.本表記法の検討に至った直接の動機は, 日本語一日本手話機械翻訳を, 音声言語間の機械翻訳と同様, 日本語テキストから手話テキストへの翻訳 (言語的な変換) と, 翻訳結果の動作への変換 (音声言語におけるテキスト音声合成と同様に手話動画の合成) とに分割し, 翻訳の問題から動作合成の問題を切り離すことにある.この翻訳過程のモジュール化により, 問題が過度に複雑化するのを防ぐことをねらいとする.同時に, 手話を書き取り, 保存・伝達する手段としての利用も念頭に置いている.本表記法で記述される手話文は, 手話単語, および, 複合語等の単語の合成, 句読点, 非手指要素による文法標識で構成される.手話単語は, 単語名とそれに付加する語形変化パラメータ (方向や位置, その他の手話動作によって付加される語彙的, 文法的情報を表す) で表す.我々の表記法は, 基本的に手話の動作そのものを詳細に記述するのではなく, 動作によって表される意味内容を記述することをめざした.ただし, 機械翻訳を念頭に置いているため, 動作への変換のための便宜にも若干の考慮を払った.本表記法の記述力を検証するため, 手話を第一言語とする手話話者による手話映像720文を解析し, この表記法での記述を試みた.全体で671文を記述することができた.十分表記できないと判断した49文 (51表現) を分析し, 問題点について考察した.

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